教育ICTリサーチ ブログ

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休校×ICTでやれたこと No.9 「オンラインでの“1対1”、“1対複数”の数学解説」(芝浦工業大学附属中学高等学校)

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府が打ち出した小中高校や特別支援学校などの臨時休校が2020年3月2日から始まりました。休校の状況にあっても、ICTを活用することで教育活動などを継続している学校の実践を「休校×ICTでやれたこと」として紹介していきます。

 今回は、芝浦工業大学附属中学高等学校の金森千春 先生からいただいた実践で、「オンラインでの“1対1”、“1対複数”の数学解説」です。

 芝浦工業大学附属中学高等学校では、全生徒が2in1 タブレットPCを持ちます(参考: S-Tab Go | 芝浦工業大学附属中学高等学校 )。WindowsタブレットPC、Discord、Googleサイト、Googleスプレッドシート、ロイロノート・スクールやMetamojiなどの手書きアプリを活用してのオンライン授業の様子を紹介してもらいました。
discordapp.com


Q1:どんなふうに使っているかを具体的に教えて下さい。

金森先生:高校2年生の数学で、生徒が質問したいときに,メールなどのやりとりだと不便だと思ったので,解説をオンラインで“1対1”や“1対複数”でできるような方法を考えました.

  1. 教師(私)が質問に答えられるスケジュールを,Googleスプレッドシートで作成し,編集可にして生徒と共有する
  2. 生徒は,質問したいことができたら,スプレッドシートに名前と簡単な質問内容を書き込んで予約する
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  3. 途中式など生徒自身が解いたものについての質問などの場合は,ロイロで質問内容を教師に提出しておく(ロイロを使っているのは手で書いたものを簡単に送れるため.それができればロイロでなくても十分です).
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  4. 時間になったら,Discordで画面共有をして,質問者と会話をしながら,送られたロイロやMetamojiに書き込んで解説しながら,解説をする.このとき,質問した人以外にオブザーバーとして見学も可.質問したい生徒,質問を覗きたい生徒には,Discordのアカウント(無料)を作成してもらって,質問会のお部屋(サーバーというようですが)に招待.


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【利点】

  • zoomやhangoutよりもDiscordはテキストベースなので,あとでその場所(サーバー)を覗いた生徒も,そこで何が起こっていたか,誰がどんな質問していたかがわかること
  • メインの部分でやり取りしているのと並行して,別にグループが立てられたり,1対1でコンタクトをとれること.(みんなの前で質問できる生徒ばかりではなく,個人的に質問したい生徒が1対1を利用したり,試験前の不安感から面接みたいな感じで利用する生徒もいました.)

まとめ

 休校に入るかもしれない、という2月28日から、生徒とのコミュニケーションをとりながら、今回のオンラインでの活動につながっていく様子を、金森先生から教えていただきました。

金森先生:はじめに,休校になるかもという報道があった日(2/28)に,hangoutでどれだけつなげるか実験したいという私の興味関心を生徒に提案しました.その日の夜の設定で,40人ぐらいがチャレンジしてくれて,定員オーバーになってしまったり,うまくいかないところを見つけることができました.


翌日(2/29)生徒たちから,「部活の連絡手段でDiscordを使っていますよ」「ゲームアプリなので,アカウント持っている生徒も多いと思います」と提案を受け,私はその場でDiscordのアカウントを作成し,簡単に操作を教えてもらいました.


大人が使いやすいもの(Zoomなど)に生徒を連れてくるのではなくて,彼らが使いやすいもの(Discord)に入っていく勇気も大切だと感じましたし,操作など生徒が親切に教えてくれました.
hangoutやMeetだと沈黙の時間みたいなものも多かったのですが,Discordは彼らのテリトリーだったせいか,とても活発に数学の質問がなされました.
生徒と一緒に質問できるスペースを構築していくことがとにかく面白かったです.


これはICTからはずれるのですが,意外と彼らは彼らだけで学習できるということがわかりました.
いまはPhoto mathというカメラでかざすと途中式まで提示してくれる無料アプリ(2回に1回は広告出るらし…)があったり,わからない問題をネットで調べれば類題を解説してくれる動画もサイトもたくさんあります.それでもわからないものだけが私のところにやってくる感じで,私の予想に反して,お店を開いていても,「何も質問なさそうだから店じまいするね~」といって世間話をして閉じる場面もありました.

Photomath

Photomath

  • Photomath, Inc.
  • 教育
  • 無料

Discordは"ゲーマー向けチャットアプリ"という分類なので,確かにここで数学の質問会を設けるのは普通の大人には抵抗があるのかもしれないけれど,目的(画面共有しながらオンラインで解説をする.見たい人は何人でも見られる.)を果たすには今回いちばん良かったと思っています.


欠点があるとしたら,おそらく生徒からの画面共有はできません.
(その代わり,テキストチャットに画像貼ったり,リンク飛ばしたりしてくれるのでそこまで不便ではありませんでした)
さらに,欠点でも利点でもあるのですが,お互い顔が映りません.本校の生徒は顔が映らないほうが心のハードルは低かったようなので,ZoomよりもDiscordの方が合っていたかなと思っています.

 金森先生がおっしゃる、「大人が使いやすいもの(Zoomなど)に生徒を連れてくるのではなくて,彼らが使いやすいもの(Discord)に入っていく勇気も大切だ」という言葉には、賛同します。生徒たちがすでにテクノロジーに慣れている部分も多いのであれば、そちらに寄せていくのもひとつの方法だと思います。

 金森先生、どうもありがとうございました。

◆ ◆ ◆

 実践紹介と共に、「もっとこうであればよかった」も合わせてまとめておけば、GIGAスクール構想後の学校に役立つ知見になると思います。引き続き、フォームからの投稿を受け付けていますので、どうぞよろしくお願いします!

docs.google.com


(為田)