教育ICTリサーチ ブログ

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書籍ご紹介:『「データの活用」の授業 小中高の体系的指導で育てる統計的問題解決力』

 お茶の水女子大学附属学校園連携研究算数・数学部会 編著『「データの活用」の授業 小中高の体系的指導で育てる統計的問題解決力』を読みました。データの活用については、ICTを活用してたくさん試行錯誤をしながら身につけてほしい能力です。興味深かった部分のメモを共有します。

 お茶の水女子大学附属学校園連携研究算数・数学部会が編著しているもので、第2章の「学校種別「データの活用」の授業」では、小学校、中学校、高校あわせて15の授業例が紹介されています。それぞれの事例について、他校種の先生からのコメントが書かれているのもとてもいいと思いました。

  • 小学校
    • かたちのなかまわけ
    • 表とまるのグラフ
    • 表と棒グラフ
    • さまざまなデータの活用
    • 二次元の表
    • グラフの見方
    • 測定値の平均
    • 柱状グラフと代表値
  • 中学校
    • 度数折れ線と相対度数
    • 累積度数
    • 相対度数と確率
    • 箱ひげ図
    • 標本調査
  • 高等学校
    • データの相関
    • 統計的推測

 小学校4年生むけの授業例「グラフの見方」では、人口統計表を見てそれをグラフにまとめていました。

最初に人口統計表をみて、その印象を語り、その後、感じたことを元にしながら、テーマ決め、テーマ別のグループ毎に棒グラフ、折れ線グラフ等で表現していく。その過程で最初の印象を修正していくことも考えられる。グラフをかく際には表したいことを有効に表現するための工夫をする。
グラフが完成した後、他のグループのグラフを見て、そこから読み取れることや、同じ国の人口を表現したグラフ同士を比較して、話し合う。そこで、データをグラフで表現することの意味や、読み取るときの留意点等に気づいていくである。(p.80)

 児童が手で書いたグラフが掲載されているのですが、グラフの書き方はいろいろです。情報を正確に書いてあったも、グラフの書き方が違えば、伝わる印象は全然違っています。同じテーマで別のグループが書いたグラフを見比べることで、グラフの見方について考えることができる活動になるのですが、これはExcelGoogleスプレッドシートなどを使うとみんな同じ見映えになってしまい、授業のねらいに迫れないなと思いました。そうしたら、むしろ子どもたちに何も残らないかもしれません。これはデジタルを活用しないで活動するほうが良い例かもしれません。

 その他にも、中学校1年生の「度数折れ線と相対度数」の授業例や中学校2年生の「箱ひげ図」の授業例では、Flashを活用したツールが紹介されていましたが、ExcelGoogleスプレッドシートでもこれらのグラフを作成することもできるので、一人1台の端末でやってみるといいと思います。

 また、高校3年生の「統計的推測」の授業例では、コンピュータと統計学を使って現象を分析する課題が出されていました。

第3学年を対象に統計分野の課題学習(全8時間)として行われた実践事例である。生徒は、選択教科として統計分野の数学(本校では、教養基礎数学Ⅲと呼んでいる)を選択した生徒対象に行われたものである。学習のねらいは、以下の①~⑤である。

①高等学校までに学習した統計分野に関する総合力を応用する機会を与え、実践力を高める。
②ICT機器の活用により、データの処理を迅速化し、様々な統計手法で多角的に分析する経験を持たせる。
③入手したデータから仮説を立て、問題解決の流れを自発的に経験し、「PPDACサイクル」の流れを再確認する。
④レポートにまとめ、発表することを踏まえ、根拠ある統計処理を重要視させる。
⑤準備された課題ではなく、自ら手に入れたデータを用い試行錯誤を繰り返して、現実的問題の解決に取り組む経験を持たせる。

以上の①~⑤のねらいを持ち、他教科の課題や実社会での活用も可能となるような、総合的かつ実践的な統計力の育成を目指している。(p.144)

 中学校・高校で、プロジェクト型の学習のなかで「データ活用」ができるようになることを目指して、そのためのツールを小学校でたくさん学んでおく、とういのはいいのではないかと思いました。

 本の最後に、連携研究のサイトも紹介をされていました。こうした小学校~高校までの繋がりを作れるのは、お茶の水女子大学のように附属学校園で連携して研究することの良さだと思います。
www-p.fz.ocha.ac.jp

(為田)