キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニックゴリンコフ『科学が教える、子育て成功への道』を読みました。副題に「強いココロと柔らかいアタマを持つ「超」一流の子を育てる」と書かれていてちょっとキツく聞こえますが、原題は”BECOMING BRILLIANT - What Science Tells Us About Raising Successful Children” (「賢くなる――子どもを成功させるために科学が私たちに教えてくれること」)です。
著者のキャシー・ハーシュ=パセックさん、ロバータ・ミシュニックゴリンコフさんは、「40年以上にもわたって言葉の発達や認知の発達の研究を共同で続け、数々の画期的な成果を上げ、何百もの論文として発表しています。現在、学術界をリードし、世界で最も著名で尊敬されている発達心理学者」(p.1)だそうです。
訳者は、慶應義塾大学 教授の今井むつみ 先生と、探研移動小学校主宰の市川力 先生です。最初の「訳者からのメッセージ」で、著者からのメッセージがまとめられていたのですが、この部分がとても大事だと思います。
私達はともすると勉強ができれば「賢く」、お金があれば「成功」と決めつけたり、反対に頭の悪い私達に「成功」は無理、安楽に生きられれば「賢く」なくてもいいと思い込んだりしてきました。しかしそれは極めて一面的な「賢さ」と「成功」の定義です。もっと言うと、これからの世界に全くそぐわない定義です。最早時代遅れの定義に縛られて、焦ったり、狂奔したり、諦めたりするのはやめて「賢さ」と「成功」とは何かを見直そう。それが著者からの大事なメッセージの一つなのです。
この本で繰り返し示される「成功」とは「健康で、思慮深く、思いやりがあり、他者と関わって生きる幸せな子供を育て、皆が他者と協力し、創造的で、自分の能力を存分に発揮する責任感溢れる市民となる」こと。(略)著者二人の考える「成功」とはまさにこういうことなのです。(p.1-2)
この本では、「成功」するためのカギとなる能力として、6つのCの力=6Csが提唱されています。
「成功」するためのカギとなる能力:6つのCの力=6Csを提唱(p.2)
- コラボレーション Collaboration
- コミュニケーション Communication
- コンテンツ Content
- クリティカルシンキング Critical Thinking
- クリエイティブイノベーション Creative Innovation
- コンフィデンス Confidence
この6つのCの力=6Csについて、第五章から第一〇章までをかけて、それぞれレベル1~4に分けて解説がされていました。以下、目次を紹介します。これを見ながら、授業の中に6Csを入れられないかな…と考えられそうです。
- 第五章 コラボレーション 一人で交響曲は演奏できない
- レベル1:自分自身が全て仕切る
- レベル2:横並びで勝手に進める
- レベル3:一緒にやりとりする
- レベル4:共に作りあげる
- 第六章 コミュニケーション 繋がりを生み出す
- レベル1:感情を剥き出しにする
- レベル2:一方的に見せびらかし、お喋りする
- レベル3:対話によってやりとりする
- レベル4:ストーリーを繋げて語る
- 第七章 知の王座を追われしもの その名はコンテンツ
- レベル1:特定の状況・領域について学ぶ
- レベル2:広く、浅く理解する
- レベル3:繋げて考える
- レベル4:熟達者になる
- 第八章 クリティカルシンキング 何を証拠と見なすのか
- レベル1:見かけをそのまま信じる
- レベル2:私の答えを絶対に正しいと信じる
- レベル3:どんな意見も正解である
- レベル4:根拠づけて上手に疑う
- 第九章 クリエイティブイノベーション 古いものを新しいものに作り替える
- レベル1:とりあえず試す・やってみる
- レベル2:手段と目標を考える
- レベル3:独自の「声」を発見する
- レベル4:ビジョンを持つ
- 第一〇章 失敗覚悟で挑戦する自信
- レベル1:根拠なき自信を抱く
- レベル2:自分の実力を想定的に見極める
- レベル3:リスクを計算する
- レベル4:失敗覚悟で挑戦する
また、ここで紹介されている6Csは、「いつでも、どこでも、誰とでも身につけられる」し、「子育て成功への道は、大人も成功する道でもある」と書かれています。つまり、学校で学べば生涯学習者を助けてくれる力になりそうです。
6Csのなかには、デジタルを活用する学習活動のなかでより学びやすい、経験しやすい、身につけやすいこともありそうだと思います。例えば、「コラボレーション」で何かを共に作りあげることとか、「クリエイティブイノベーション」で、とりあえず試してみることとか、「コンフィデンス」のところで失敗覚悟で挑戦する(そして、何度でもやり直す)こととかは、デジタルが学習者の助けになってくれるのではないかと思います。そうした視点でもって、授業設計にICTを組み込むといいのではないかと思います。
最後に、第七章のなかで書かれていた、「生涯学び続ける誓い」がとてもよかったので、これも紹介しておきたいと思います。
生涯学び続ける誓い(p.212-213)
- 私はただ事実を覚えるために勉強するのではなく、知識のシステムを作るために概念を深く学びます。
- 私は「学び方を学び」ます。なぜなら情報は無限に増え続けるからです。
- 私はよく寝て、朝ごはんをしっかり食べます(これはずっと大事なこと!)。
- 私は難しいこともすぐに諦めず、他の人とコラボレーションして、問題解決にチャレンジし続けます。
- 私は学んだことをどう現実場面で応用するかいつも考えます。知識は使う練習をしないと錆びついてしまうからです。
これもまた、授業を考えるときに役立ちそうだと思っています。子育て成功のためのノウハウ本ではなく、学校の授業の基盤を作るときの参考になる本だと思います。
(為田)
