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淑徳小学校 淑徳アルファ カズトロジー 授業レポート No.1(2025年5月〜7月)

 弊社フューチャーインスティテュートは淑徳小学校放課後クラブ「淑徳アルファ」内で、コンピュータを使ってさまざまな活動を行う授業「カズトロジー」を実施しています。

 1学期にカズトロジーの授業をはじめて受講する1年生のなかには、マウスに慣れていなかったり、手が小さくて上手にマウスを操作できない子も多くいます。そのため、1年生の最初の活動としては、楽しみながらクリックやドラッグなどのマウス操作の練習を楽しくできるカリキュラムを作っています。

本を整理しながら、マウス操作を練習する(2コマ)

 1年生は最初に「本を整理しよう」というプロジェクトに取り組みます。スクールタクトを開くと、赤・青・緑の3色の本が整理されていない状態になっている本棚が表示されます。子どもたちには、「この本棚を整理しましょう」と言って授業を始めます。
 赤い本を「あか」の棚に、青い本を「あお」の棚に、緑の本を「みどり」の棚に最初は移動してもらうために、移動したい本をクリックして選択し、そのままドラッグして棚を移動できることを説明します。「本を整理する」という目的が与えられていることで、子どもたちのモチベーションが上がります。最初は少し操作に苦労する子もいますが、何冊か整理しているうちにマウスのクリックやドラッグもできるようになります。
 ときどき誤操作をしてしまうこともあるので、「あ!失敗した、と思ったら、左上にある矢印のボタンを押したら、元に戻るから失敗しても大丈夫です」と最初に説明します。子どもたちに「元に戻す」ボタン(=Undo)の操作方法を説明して「失敗しても大丈夫」と伝えることで、練習をするときの心理的ハードルを下げられると思っています。

 本をそれぞれの色の棚に移動している途中で、教室のあちこちから「たおれてる本を直したい!」という声があがってきます。そこで、「そうだよね、横になってる本を縦にしたいよね」と言って、本をクリックして選んで、ハンドルをドラッグして回転ができることを説明します。
 最初は本を選んで動かしたり回転させるのに苦労する子が多いですが、すぐにできるようになります。だいたいここまでで1コマ目が終了です。

 2コマ目のはじめには、だいたい「もうできちゃったよー!」という子がちらほらいます。ここで、「本棚がきれいに整理できたので、今度は自分で好きな色の本を増やしましょう」と言って、図形をドラッグして作成する方法を紹介します。
 子どもたちはおもしろがって、いろいろな図形を作成していきます。本棚には、すごく分厚い本や星形の本などいろいろな形ができるので盛り上がります。「どんな形の本でもいいですよ」と言うと子どもたちはわいわいと盛り上がりながら図形を作っていきます。途中、共同閲覧モードに設定すると、お互いの作っている本棚が見えるので、「あ、これおもしろそう!」と思ってどんどんやりたいことが増えていきます。
 「本棚を整理する」というストーリーからだんだん離れていってしまうのですが、スキルの練習としては、本の形をした長方形を作るのも、円や星型を作るのも操作はほとんど同じでドラッグして図形を作る練習にはなっているので、どちらでもよいことにしています。

タングラムで遊びながら、マウス操作を練習する(3コマ)

 「本を整理しよう」というプロジェクトに取り組んでマウスの操作に慣れてきたところで、1年生は次に「形を作ってみよう」というタングラムを使ったプロジェクトに取り組みます。

 自分で動かせる4つの同じ形の水色の三角形と、三角形をぴったりはめる見本(違う色で作って、移動できないようにしてあります)を中央に配置したワークシートを、スクールタクトで配布します。
 ワークシートの下にある4つの水色の三角形を動かして見本どおりの形を作っていきます。1つ目の三角形はそのまま移動するだけで見本にはめられますが、2つ目以降は三角形を回転させないと見本にはめられないようになっています。子どもたちから、「これじゃ無理!」「まわせないの?」「本棚でやったときと一緒じゃない!?」と声があがるので、操作を一度みんなに向けて説明して、そこから先は自分でやってもらいます。
 三角形を移動させたり回転させたり、という操作を自分でできれば、ぴったりはめられなくても大丈夫、ということを伝えています。子どもたちは、みんなで助け合いながらやっていきます。

 ワークシートは全部で4ページあって、最初の2ページは移動と回転だけができれば見本と同じものが作れるようにしていますので、2ページ目までは子どもたちは自分でどんどん進めていけます。
 3ページ目は、見本のとおりの形を作るために8個必要な三角形が、3個しか用意していないので、子どもたちから「足りない!」「本棚のときにやったから、三角、作れるよ!」という声があがります。
 そのタイミングで、「まったく同じ三角を作るのは難しいよね?コンピュータだったら、まったく同じ三角を簡単に作れるから、そのやり方を説明するね」と言って、コピーとペーストの方法を紹介します。

 4ページ目は、白紙に三角形を1つだけ置いてあります。子どもたちは3ページ目でコピーとペーストの方法を知って、三角形をいくつでも増やせるようになっているので、たった1つの三角形を自分で好きなだけ増やして、大きさも変えて、自由に制作してもらいます。

 コピー&ペーストでたくさん増やした三角形を組み合わせて模様のようにする子もいますし、三角形を組み合わせてキャラクターや動物を描こうとする子もいます。
 最後は、ペンツールで名前を書いたり、絵に何かを付け加えたり、ということもOKにしています。結果、いろんな作品ができるので、子どもたちはお互いの作品を見て「これすごーい!」「おもしろい!」と笑いあっています。同じようにやってみようと頑張る子もいます。

 こうして楽しく遊びながら、マウスの操作に慣れ親しんでいくことができて、1年生はコンピュータを使う時間を楽しめるようになっていると思います。

 個人的には、1年生のこの時期はマウス操作に慣れてもらうことと、「失敗した!」と思ったときにすぐに「元に戻す」(=Undo)機能を使えるかどうか、というところを気にしています。それさえできれば、すごく困る場面はあまり出てきませんし、何より「コンピュータは失敗しても平気だから、いろいろ試してみよう」という気持ちを子どもたちにもってもらえると思っています。

 No.2に続きます。

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(為田)