2019年6月19日に、田園調布雙葉中学高等学校の高校3年生の情報社会学(担当は小林潤一郎先生)の授業を見学させていただきました。受講者は15人で、パブリック・リレーションズ for Schoolを題材にして、1回目の授業でパブリック・リレーションズについて学び、2回目の授業で新渡戸文化中学校とネットでつないで授業をするそうです。
この日は1回目の授業で、株式会社日本パブリック・リレーションズ研究所の宮田純也さんの授業が行われました。3時間目と4時間目の2コマを使って、パブリック・リレーションズについて考えました。
授業で使うテキストとして、「パブリック・リレーションズ for School」を一人1冊配布します。
宮田さんは、「PRという言葉を聞いたことがありますか?」と生徒たちに質問し、「PRには、“Promotion(販売促進)”と“Public Relations”と2つの意味があります」と説明をしました。。これは、「新聞に出るとき、広告として出るか、記事として出るか、の違いです」と説明がされました。
テキスト「パブリック・リレーションズ for School」の最初にあるコンテンツ「はじめに」では、バリ島で起こったレジ袋廃止運動が紹介されていました。漫画で簡単に読めるようになっていました。このレジ袋廃止運動は実話なので、ネットなどで読むこともできます。
tabi-labo.com
このエピソードから、宮田さんは、「自分だけではできないこともある。何かをやりたいときには、社会的、個人的に、誰かと関わるのが必須である」といいます。
そこから、コミュニケーションについて考えていきます。「目的のないコミュニケーションはただのおしゃべりであり、相手のことを考えながら関わり合うコミュニケーションが重要」と宮田さんは続けます。
ここから、ワークを行います。田園調布雙葉学園のコンピュータ教室では、配布したワークシートにデジタルペンを使って書くと、書き込んだ内容をみんなで共有できる、OpenNOTEというシステムを利用しています。
「1時間目オリエンテーション」の中の「ワーク1:あなたの役割を考えよう」では、「What are you?」という質問に、自分はどんな役割を持っているのかをできるだけたくさん書いてもらいました。役割には、例えば、高校生、先生、親、子ども、○○部の部員、△△という製品の所有者など、さまざまな役割があります、ということを宮田さんは伝えます。
生徒たちは、「長女、都民、大田区民、ダンス部員、受験生、自転車の所有者…」などさまざまな役割をワークシートに書いていました。こうしてさまざまな役割を書くことで、自分がどのように社会と繋がっているのかを考えられるように思いました。
続いて取り組んだ「ワーク2:自分に関わる人たちを書いてみよう」では、ワークシートの中心にある「わたし」から、どんな人と関わっているのかを、どんどん広げていきました。さっき書いたワーク1の役割から、その役割の先にどんな人と繋がっているかが考えられます。家族や学校はもちろん、SNSなども考えます。もし、電車で通学していれば、鉄道会社はもちろん、駅のテナント、駅にある広告の会社、駅を清掃している会社などとも関わりがあることになります。
こうして考えると、社会との関わりを意識できるようになると思いました。すべての人や物事は6ステップ以内で繋がっているという仮説「六次の隔たり(Six degrees of separation)」を思い出しました。
「ワーク3:「やりたいこと」と「関わりのある人」を関連づけましょう」というのをやりました。これも、パブリック・リレーションズの作り方と、自分自身のやりたいことを実現することとの第一歩としておもしろいと感じました。
休み時間を挟んで、テキスト「パブリック・リレーションズ for School」の「2時間目 みんながハッピーであること」に取り組みます。製薬会社の製品に問題が発覚して、社長としてどういう行動をするか、というテーマでした。
ワークシートに、「あなたが社長だったらどんな決断をしますか?」というのを書きます。生徒たちの書いているのでは、「事前にオープンにして、商品は回収する」という生徒が多かったです。
ただ、倫理的には「情報をオープンにして回収する」というのがいいのだけど、実際にそれを行動に移すのが難しい、というところを話し合えれば、おもしろいかと思いました。あるいは、「回収派」と「隠蔽派」に強制的に分けてディスカッションするというのでもいいかもしれません。
最後に、今日のフィードバック・感想をオンラインで書き込んで授業終了でした。授業のフィードバックは以下のようなものがありました。
- いつも私たちの周りにあるものにはとてもいろいろなものや人が関わっているのだと実感することができました。結節点をたどっていけば世界にまで視野が広がるなと思いました。また私は危機管理に興味があったので最後にやったテーマはとても面白かったです。危機管理は企業に深くかかわっていて、普段の私たちにはあまり関係ないように思われますが、普段の生活でも何か良くないことが起こったらすぐに正直に言ったほうが被害も罪も最小で収まるなと思いました。
- いつも不祥事のニュースをみて記者会見などでも、もごもご「だれの責任か!」「だれが辞任するのか!」「辞任しないのか!?」といったことばかり報道されていますが、すごく不思議に思います。みんな何をするのがよいかわかっているはずなのに相変わらず、他の会社でも不祥事がおこる...なにかがあったときに迅速に的確に動ける組織を増やすためにはどうすればよいのかと思います。
- 私たちはこれから社会に出ていく中でたくさんの人に出会い経験していくと思います。その中で多数の意見を優勢にするのではなく、少数派の意見もしっかり取り入れ、「みんながハッピーであること」を第一に考えられる人でありたいと、今回の授業を受けて思いました。みんながいいと思える、そんなきもちにするためには、相当な試行錯誤が必要で、そのために多くの時間を費やすリスクもあると思います。でもそれだけの労力や時間は必ずどこかで良い結果に結びつくと思うし、最終的にみんなが良いと思えることにつながると思いました。学校生活の中では多数決で決めることが多いですが、少数派の意見にも耳を傾けていきたいと思います。
No.2へ続きます。
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(為田)