教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.3(2020年6月4日)

 2020年6月4日に、京都教育大学附属桃山小学校で3年生を担任されている田中麻衣子 先生にオンライン授業についてのインタビューをさせていただきました。

 京都教育大学附属桃山小学校の3年生では、主に国語と算数でオンライン授業を実施していたそうです。オンライン授業と言っても、3年生はタブレットにこれから慣れていく段階なので、家庭で保護者にサポートしてもらいながら活用している状態だそうです。そのため、Zoomを活用したオンタイムでの授業は保護者の時間を都合するのが大変になるため、授業は基本的には行わず、ロイロノート・スクールを活用したオンライン学習をメインに行っていたそうです。
 しかし、5月初旬に決定した休校期間の延長後には、Zoomを使った学級活動を導入し、新しい担任の先生やクラスメイトと顔を合わせる場面を設定することで、学校再開へのモチベーションを高めていったそうです。ただし、このZoomを使った学級活動の時間は、保護者の協力が必要な子どもたちが多数を占めるという実態があったので、設定する時間帯を配慮したり、回数を決めて行ったりしていたそうです。

 そうした状況で、リアルタイムでない非同期の形で、行っていた算数のオンライン授業では、児童が描いた棒グラフをまとめて、みんなで見せ合ったりしていたそうです。
 国語の授業では、いまは音読ができないので、音読している様子を動画で撮影して、それを見せ合い、「どんないいところがあったかな」といった方法で交流しているそうです。
f:id:ict_in_education:20200616174828p:plain

 オンライン授業で設定する課題は、ロイロノート・スクールで配信しているそうです。送られてきた課題の取り組み方としてはタブレットの画面上で取り組む児童もいるし、印刷して取り組んでから撮影し提出する児童もいるそうです。比率としては、3分の2が直接書き込み、3分の1は印刷したい、という感じだそうです。
 現在では休校期間が終わり、児童が登校できるようになったので、プリントを渡すことができるようになり、課題の幅が広がるようになったと思います。課題の内容によって、タブレット上でやった方がいいものも、プリントの形でやった方がいいものもあると思いますので、渡す課題のスタイルを選べるのはいいことだと思います。

 これまでの通常の授業とオンラインの授業を比較したときに、田中先生は「対面の授業だと、子どもの反応がわかる」と言います。たとえ意見を言っていなくても、うなずいている様子が見えたり、首を傾げている様子が見えるのは、先生方にとって大きな意味があったのだと思います。それがオンラインになると分からず、Zoomなどを利用したオンタイムの授業を行うことが難しい実態があったため、そこは工夫をしなくてはならない部分だったのだと思います。
 ただ、オンライン授業の形で課題を提出してもらうようになって、提出状況や到達度をひと目でわかったり、記録を取りやすかったりする、という利点もあると田中先生は言います。
f:id:ict_in_education:20200616174914p:plain

 課題の提出期限は、2日後くらいにしているそうです。これは、保護者と一緒に家庭で学習をしているケースが多いことを考慮しているからです。急に「明日までに提出」と言われても時間が取れる家庭とそうでない家庭がありますので、こうした気配りは大変ありがたいと思います。
 オンライン授業が始まって1~2週くらいは、問い合わせの電話が保護者からかかってきていたそうです。1年生が入学式の日程で操作説明会を保護者が受けられたのと比べると、3年生の保護者にはそうした機会がなく、また児童も慣れていたわけではないため、わかりにくい部分もあったのだろうと思われます。
 ただ、そうした点があっても、「何もできないよりも、リアルタイムでなくてもオンライン授業をしてほしい」というのが保護者の声だったそうです。この声に答えるために、オンラインとオフラインを組み合わせて授業を進めていっていることがわかりました。

 No.4に続きます。

(為田)