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さとえ学園小学校 授業レポート No.6(2024年6月12日)

 2024年6月12日に、さとえ学園小学校で授業を参観させていただいた後で、さとえ式レベルアップ型ルールの運用面でのアップデートについて、山中昭岳 先生にお話を伺いました。

さとえ式レベルアップ型ルールのアップデート

 2021年に僕が書いた『一人1台のルール』では、さとえ学園小学校で実践されていたレベルアップ型ルールの主なポイントは、以下のようなものでした。

さとえ式レベルアップ型ルール(2021年)

  • グリーン→ブルー→ゴールドの3つのレベルがある。進級に伴って自動的に上がるのではなく、レベルアップのテストに合格しなければならない。
  • レベルに応じてiPadの使える機能や学校の中でできることが多くなって、iPadを学びに使う方法の自由の幅が広がっていく。
  • レベルアップのためのテストでは、iPadをよく使うための「スキル」と「モラル」があるかどうかを評価される。
  • 先生からの評価だけでなく、家庭でのiPadの活用の評価とクラスメイトからの評価も含めて、多面的評価がされて、レベルアップできるかを判定される。
  • レベルアップテストの内容については、子どもたちにも家庭にも公開している。

 今は、このレベルアップ型ルールの運用方法は変わっているそうです。2021年には、学校でレベルアップのテストを行っていましたが、いまはレベルアップのテストは家庭でしてもらっているそうです。山中先生に伺った変わった点を以下にまとめました。

さとえ式レベルアップ型ルールのアップデート(2024年6月現在)

  • レベルアップテストは3年生と4年生の最初に行うだけで、それ以後は学校ではしていない。
  • レベルアップテストは上記のタイミング以降は家庭で行う。
  • レベルアップ型ルールの運用と合わせて、全校児童のiPadの設定は保護者にやってもらうことになっている。
  • 3年生以上は学校でのMDM管理もしていない。レベルアップによるiPadの設定変更の方法を家庭に公開しているので、それを見ながら家庭でやってもらっている。
    • スクリーンタイムの設定方法、レベルごとに使うiPadの壁紙のデータなども公開している。
    • 児童が新しいアプリを入れたいときは、紙で申請を出す仕組みを作ってある。
  • 2024年度からは、iPadの設定などに関わるサポートを5年生・6年生がやってくれるようになった。
  • 3年生は「ブルー」からスタートすることを求めているので、1年生・2年生の間に、みんなそこまでレベルアップしている。
  • 学校での定期的なレベルアップテストの機会がなくても、きちんとゴールドまでレベルアップする子もいる。

 この日の授業中にも見ましたが、子どもたちが使っているiPadのホーム画面を見ると、壁紙の色でその子のレベルがわかります。それだけでなく、ホーム画面にいろいろなウィジェットが出ていて、自分の端末として自由にカスタマイズして使っている様子も見られます。

 山中先生は「iPadをちゃんと使っている子たちが大半になったんです。その子たちが学校で生きやすいようにしたい。子どもたちはデジタルを使って能力を拡張しているのに、その拡張した能力を使う自由を奪ってしまわないようにしたい」とおっしゃっていました。

 さとえ学園小学校で、子どもたちが一人1台のiPadを自由に使えるようにしている環境を実現しているのも、さとえ式レベルアップ型ルールでのレベルアップ認定やiPadの設定などを保護者に任せられるのも、その基盤にあるのは、学校と保護者の間の信頼関係だと思います。
 山中先生は保護者会などの機会にいつも「さとえの保護者から日本のICT教育を変えよう」と伝えているそうですが、学校と保護者が一緒になって、iPadを活用する環境を作っているのだということがわかります。

児童によるDX委員会

 2024年度から、さとえ学園小学校ではDX委員会という組織を立ち上げたそうです。DX委員会には、iPadの活用ルール作りをする「ルール部門」や、著作権や肖像権などについて勉強して学校に伝える「知識・技能部門」などがあるそうです。DX委員会には5年生と6年生が所属しているそうですが、山中先生は「さんざんiPadで悪さした子たちがDX委員会に入ってくるのがおもしろいですね」と笑っていました。自分たちで悪いこともやり尽くしたからこそ、そのスキルを今度はコミュニティのために活かす、こうした学校文化はとても面白いと感じました。

 DX委員会を作るきっかけは、「そろそろあってもいいんじゃない?」という先生からの提案があったからだそうです。
 少数の先生たちだけでなく、多くの先生たちにも、「子どもたちがiPadをちゃんと使っている子たちが多くなった」「その子たちが自由にiPadを使える環境を作りたい」というコンセプトが共有されてきたからこそ実現したのではないかと思いました。

(為田)