2024年9月12日に戸田市立芦原小学校で授業を参観させていただいた後、校内研修の講師をさせていただきました。芦原小学校での校内研修は今年度2回目です。前回の研修では「デジタル・シティズンシップ教育について」というテーマでお話をしましたが、今回の研修は「授業でのICT活用について」というテーマでした。
授業でのICT活用を進めていく視点として、アナログとデジタルで何が違うのかを考えることをしてほしいと思いました。プレゼンの最初に、4つの学校の事例を紹介して、以下のようなトピックを先生方に投げかけてみました。
- ICTを使って子どもたち一人ひとりが思考したり表現したりする授業をつくるためには、先生からの良質な問いかけが重要。一斉授業の形式でも、先生が良い問いを投げかけることで子どもたちの好奇心が高まり、それから子どもたちに学びを委ねていくのでもいいのでは?一概に、一斉授業がいけない、というのではないのではないか?
- 「デジタルでもアナログでもいい」と子どもたちに伝え、自分たちで選べるようになってほしい。そのために、どちらの良さも知っておいてもらうことが重要。一見、教室が雑然としているように見えるかもしれないが、「デジタルとアナログが混在している学びの場」をつくって、選べるようにすることが大事かもしれない?
- 自由進度学習で、子どもたちに自分たちで学べるようになってもらう、という方針は良い。ただ、子どもたち同士できちんと学べるかどうか、はしっかり見とる必要がある。子どもたちが、きちんと説明する語彙をもっていなかったり、できるようにするための指導ノウハウをもっていなかったりするのは当然。そこに、先生にしかできない仕事があるのでは?
- ICTを活用することで、作文でもデザインでも動画編集でも、「何度でもやり直せる」ようになった。しかし、子どもたちがみんな何度でもやり直してより良い作品を作る、というふうにはすぐにはならない(と、為田は授業を教えていて悩んでます!)。いかに先生が言葉をかけて、子どもたちが「良い作品を作りたい!」と思うようなクラスを作るか、これも先生方にしかできない仕事。
その後で、ICTをどう使えているかの軸として「教育ICT利活用の目的9類型」を紹介して、最後に「9類型のなかであれば、どの目的を達成したいと思いますか?」と質問して、コメントをPadletに書き込んでもらいました。
Padletには質問も書いていいですよ、とお伝えしてあったので、以下の質問をいただきました。
ICTは大歓迎だし、今後も必須。しかし、頼り過ぎるが故、子供たちの非認知能力が低下していると感じています。特別支援的な視点や子どもの意欲に前向きなのには否定はないが、ICTICT過ぎて、「小学校」が担う教育の大事なものを失っているように感じます。為田先生は、このあたりのニュアンスをどう感じていらっしゃいますか?
個人的には、ICTに頼りすぎてしまって、ICTがなかった頃には普通にできていたことが失われてしまうのであれば、それはちょっとやりすぎだと思っています。そうした場面は実はいろいろな学校で見られていると思います。
例えば、授業支援ツールを使っていて情報共有が楽になったから、子どもたちが画面から全然目をあげなくなってしまって、発表している子を見なくなってしまっている授業などもそうだと思います。あと、検索エンジンはたしかに便利ですが、「調べても出てこないのでわかりません」とそこで止まってしまう子もいます。
こういう部分が、「ICTICTし過ぎて、学校が担う教育の大事なものを失っている」と言えるのかもしれません。これらは、「ICTを活用しているんだからいいじゃないか」という話ではないと思っています。
こうした質問が出ること自体が、ICT活用が順調に芦原小学校で根づいていることを示していると思っています。きっと芦原小学校の職員室で、何度もこのテーマについて先生方がディスカッションをしているのではないかと思います。そうして学校でディスカッションをしながらバランスをとっていくことが大切だと思いました。
(為田)